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新たに生産年齢に達する世界の12億人のための雇用創出

新たに生産年齢に達する世界の12億人のための雇用創出 写真: Vincent Tremeau / World Bank

世界は様々に異なる波長で動いています。戦争、新しいテクノロジー、市場のパニックなど、高周波のショックは急激に発生し、圧倒的な注目を集めます。他方、人口動態、グローバル化、水や食糧の不足など、低周波の力は、ゆっくりではありますが容赦がありません。

高周波の波は緊迫感を与え、低周波の波は構造的な変化をもたらします。

だからといって危機が重要でないわけではありません。ただし、差し迫った危機がより激しく燃え上がり、メディアでより多く取り扱われるというだけの理由で、ゆっくりと広がる火事に飲み込まれるわけにはいきません。じわじわと燃え続ける炎を無視していると、いつか手に負えない大火災に変わります。

そのうちの一つの力はすでに動き始めています。途上国では今後10〜15年の間に、12億人の若者が生産年齢に達する見通しです。これほどの規模の労働力増加を世界はいまだ経験したことがありません。 現在のペースでいうと、こうした国々がその間に創出できる雇用は約4億人分にとどまるとみられるため、圧倒的な数の雇用が不足することになります。

この問題は開発課題として取り扱われることが多く、実際にそうではありますが、同時に、経済的な課題でもあります。そして、国家安全保障の課題としてますます重要性を増しつつあります。

先月のダボス会議で印象的だったのは、この問題がいかに簡単に脇に追いやられていたかということです。目の前の緊急課題の前にかすんでしまっていたのです。しかし、この問題は、今後のG7やG20のような国際会議で決して無視されてはいけません。

早い段階で人々に投資し、生産的な仕事に結びつければ、膨大な人数で構成されるこの新世代は尊厳ある生活を送り、成長と安定の基盤となることが可能です。ですが、そうしなかった場合、その結果がどうなるかははっきりしています。組織・制度への圧力が高まり、非正規の移民が増え、紛争が発生し、若者たちが何とか道を切り拓こうとするな中で不安定性が高まることになります。

世界銀行グループは、公的資金、知見、民間資本、リスク管理ツールを組み合わせ、雇用創出戦略を進めており、その戦略は3つの柱で構成されています。

まず、インフラの整備です。人的インフラと物理的インフラの両方が対象になります。安定供給を期待できる電力、交通、教育、保健医療がなければ、民間投資や雇用の実現は決して望めません。物理的インフラの役割については理解が進んでいますが、人への投資も同様に不可欠です。例えば、インドのブバネシュワルにある技能訓練センターは、政府や民間セクターとの連携により支援されており、 年間約3万8,000人にトレーニングを実施しています。訓練は実際の市場の需要に合ったものなので、修了者の大半は、工学、製造、知的財産の訓練経験を役立てて仕事に就いたり、自ら雇用を創出したりしています。

第二に、ビジネスに優しい環境の構築です。明確なルールと予測可能な規制は不確実性を和らげ、ビジネス環境を改善します。起業家や企業が自信を持って投資し拡大すると雇用が創出されます。公的資源はそのプロセスの始動に役立つ可能性がありますが、大規模な雇用創出は民間部門、特に大半の雇用を生み出す零細・中小企業にかかっています。

これが第三の柱、企業の規模拡大支援につながります。世界銀行グループは民間部門を支援する機関を通じて、直接投資、資金提供、保証、政治的リスク保険を提供しています。最近の例の一つとして、農業分野を中心にブラジルの小規模企業に低コストで約7億ドルの資金を提供するブラジル銀行を支援する貿易金融保証により、現地の成長を牽引する企業に資本を届けています。

我々が、雇用について最大の可能性があるとみなし集中的に支援している5つの部門があります。インフラとエネルギー、アグリビジネス、プライマリ・ヘルスケア、観光、高付加価値の製造業という、いずれも安定して大規模雇用を生み出している部門です。

これは抽象的な理論ではありません。エビデンス、各国での経験、そして限られた資源をどこに投入すれば最大の効果が得られるかという現実的な判断に基づいています。

また、誰かの利益が誰かの損失になるゼロサムの提案でもありません。

2050年までに、世界人口の85%以上が途上国に住むと見込まれている。これは世界の労働力の歴史上最大の増加であるだけでなく、将来の消費者、生産者、市場の最大の成長も意味しています。動機が開発、利他主義、投資収益、安全保障のいずれであっても、この取組みにエネルギーと資源を投入することに理由と見返りがあります。

途上国は、雇用により所得、安定、尊厳がもたらされるという恩恵を受けます。その結果、内需が拡大し、若者が他の場所に流出するのではなく自国の未来に投資する動機が生まれます。

先進国もまた恩恵を受けます。成長を続ける途上国はより強力な貿易パートナー、より強靭なサプライチェーンの基盤、より安定した隣国となります。こうした市場の成長は世界的な需要を拡大し、国境を越えて多大な経済的・政治的コストをもたらす非正規の移民や不安定性を生む圧力を和らげます。

そして民間セクター、つまり金融機関と事業者の両方にとって、これは今後数十年で最大の機会の一つとなるはずです。急速な人口増加は、エネルギー、食料システム、保健医療、インフラ、住宅、製造業への持続的な需要を生むからです。

制約があるからといって、機会がないわけでは決してありません。現実のリスクがあるとともに知覚されたリスクも確かに存在します。開発機関が触媒の役割を果たせるのはまさにこの状況です。具体的には、インフラへの資金提供、規制改革の支援、リスクの低減においてです。

正しく進めれば、世界を動かしている波長の長い力、この場合は人口動態は、変動やリスクの源ではなく、成長と安定性の原動力となるでしょう。正しく進めることができなければ、我々は危機に直面し続け、何年もあるいは何十年も前から明らかだった展開への対応に追われることになるでしょう。

こうした力が未来を形作るかどうかが問われているのではありません。そうなることはすでにわかっています。問われているのは、早めに行動してそうした力から機会を開くか、それとも不安定性が現実のものとなるのを何もせずに待つのかどうかです。

 ブルームバーグ掲載記事より転載


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